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溶射皮膜と硬質クロムめっきの耐摩耗性の比較と評価
(潤滑状態での比較と評価)
足利工業大学 工学部機械工学科 戸部 省吾

1 緒言
2 実験方法
3 摩耗試験機
4 参考資料
5 相手材が鋼球の場合の実験結果および考察
6 相手材がSi3N4球の場合の実験結果および考察
7 まとめ
2実験方法
 本研究では、図1(3 摩耗試験機)のボール・オン・プレート往復摩耗試験機を使用した。試験片のうちWC-CoCr、WC-Cr3C2-Ni、ハステロイC276は高速フレーム溶射法(HVOF)で成膜し、グレーアルミナ、クロミアは大気プラズマ溶射法(APS)で、クロムめっきは電気めっき法により形成した。
 ボール・オン・プレート往復式摩耗試験機は、相手材にφ9.525mmの鋼球、φ10.0mmのSi3N4球を用いて摺動速度0.042m/s(2500mm/min)、荷重を10Nに設定し、摩耗距離(摺動距離)は10000mとした。試験前と2000mごとに試験片と相手材の重量を測定し、試験中に摩擦係数も測定した。光学顕微鏡による表面観察も試験前と試験後に行った。
 潤滑装置は、潤滑油を滴下する方式で、図1のように製作した。潤滑油は基油(シェルビトリヤオイル,動粘度68mm2/s)および自動車エンジン用合成油(5W-30)を用いた。滴下量は1往復につき、約1滴とした。したがって、試験片と相手材の接触面には常に新しい潤滑油が供給された。
 溶射皮膜を潤滑下で摩耗量を測定するときの問題点は、試験中に潤滑油が皮膜の気孔中に浸透し、重量が増加してしまって摩耗量を正確に測定できない恐れがあることである。予備実験の結果、本実験で使用した潤滑油の場合、潤滑油中に48時間浸漬すると、潤滑油の気孔への浸透は飽和状態となることが分かったため、摩耗試験では、同じ時間、試験片を油中に浸漬した後、試験を開始した。また、摩耗試験後の重量測定では、アセトンで試験片を十分洗浄してから行った。その手順はすべての試験片で同一とした。