日本溶射工業会

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防食溶射皮膜の特徴

 一般的に使用されている亜鉛めっきと亜鉛溶射皮膜を比較すると、例えば橋梁構造物などの溶融亜鉛めっきは、製品に高熱を受けて変形や変質を生じたり、めっき浴槽の制限、皮膜厚さの制限、部分的補修が不可能であり、また現場作業ができないなどの問題がある。
 一方、亜鉛溶射は大きな構造物にも溶射が可能で、溶射皮膜厚さも自由に設定でき、基材の熱による変形や変質もなく、溶射方法が簡単で移動設備があれば建設現場、又は補修現場において溶射を施工することができる。このことは亜鉛、アルミニウム及びそれらの合金溶射にも共通である。
 亜鉛、アルミニウム及びそれらの合金などの溶射皮膜は、皮膜自体に耐食性があり、素地を電気化学的に防食する性質をもっている。電気化学的な防食とは、素地表面より溶射皮膜の腐食電位が負であるために皮膜が犠牲になる。
 基材の保護は溶射皮膜の犠牲において行われており、保護寿命は溶射皮膜の付着量と皮膜厚さに比例している。
 溶射した基材はいつまでも劣化せず、塗料を塗り替えることによって永久的に基材を保護することができる。また、溶射皮膜厚さが均一であることが皮膜の信頼性を高めることができる。  鉄の腐食メカニズムは鉄表面上に構成された腐食電池(局部電池)の腐食電流によってアノードから鉄がイオンとなって溶出していく。
 図1に示すように、表面の酸化膜に穴がある場合、それが水と接触すると液に対して皮膜部(これが電気化学的に電位が高い部分:カソード電位)は穴部(電位が低い部分:アノード電位)よりも高電位を示し、液ならび金属を通じて矢(↑)の方向に電流が生じるから、低電位の穴部から液に向かって電流が流れ、鉄はとFe2+なって溶出する。すなわち、この部分がアノードとなり、そして皮膜部は流れた電流当量のが放電析出する。しかし、溶解酸素があると図1に示すようにFe(OH)2は酸化されてFe(OH)3水酸化第2鉄に変わる。一方、鉄部(カソード)ではH++e-→Hの還元反応が起こる。
 そして水素の蓄積によって分極が大きくなり、電流が流れにくくなる。しかし、酸素があると水素は水となって除かれるから大きな腐食電流を持続する。
 鉄に亜鉛溶射皮膜を形成した場合は、鉄よりZn溶射皮膜は電位が低いため、鉄がイオン化する前にイオン化し、鉄のイオン化を防止する
 (2Zn→2Zn2++4e-)。また亜鉛が放出した電子が介存して、水と酸素が反応して水酸化イオンができる(O2+2H2O+4e-→4OH-)。さらにZnイオンと水酸化イオンが反応し、水酸化亜鉛ができる(2Zn2++4OH-→2Zn(OH)2)。さらにこれらの現象を繰り返しながら鉄基材を錆から守る。

図1 自然環境下の鋼材および皮膜欠陥部における腐食・防食機構

図2に示すように亜鉛溶射皮膜に封孔処理し、複合皮膜を形成し、さらに塗装を施工すると耐食性は向上し、長期的にメンテナンスを行う必要がない。

図2 亜鉛溶射皮膜の効果的な使用例

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