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WC系溶射皮膜と硬質Crめっきの転動疲労特性の比較
足利工業大学 工学部機械工学科 戸部研究室

1 研究の背景と目的
2 実験方法
3 転動疲労試験結果および考察
4 結論
研究の背景と目的

 耐摩耗性に優れている硬質クロムめっきは、多くの機械部品や工具類に適用されている材料の一つである。しかし、硬質クロム用めっき液には、有害な六価クロム、シアン化物、カドミウムなどが用いられその廃液中の排出量は厳しく制限されている。また、めっき作業中には電解液ミストを含む多量の水素ガスが発生するため重大な環境汚染源として指摘されている。欧州連合(EU)では、RoHS(Restriction of Hazardous Substances.)で電子・電気機器における特定有害物質の使用制限によって六価クロムは使用できないため、代替手段として三価クロムを使用している。しかし、三価クロムは六価クロムと比較すると薬品が高い、耐食性が低い、処理液により仕上がりにばらつきがあるなどの問題や物性に違いがあり、すべての六価クロムとの代替技術とはならない可能性がある。このように、ウェットプロセスでは、排水処理等に莫大な費用がかかることもあり、国内企業では取り扱わない傾向にある。
 一方、溶射法はドライプロセスに属するため有害な廃液を出さず、集じん装備や防音室によって環境汚染や騒音問題を解決できる有用な表面処理である。そこで、鉄鋼業や製紙工業で多用されているロール類に使われている硬質クロムめっきが、高速フレーム(HVOF)法で成膜したWC系溶射皮膜で代替が可能であるか検討することが本研究の目的である。