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■溶射騒音の能動制御の可能性について
九州大学大学院工学研究院 雉本 信哉

1 はじめに
2 能動音響制御の原理および特徴
3 受動的音響制御と能動的音響制御を併用した減音効果
4 今後の検討課題
1 はじめに
 日本溶射工業会・ハードフェーシング委員会から,能動的音響制御技術を用いて溶射騒音が抑制できないかとの依頼を受け,その可能性について調査を行ったものである。調査に先立ち,溶射作業の環境を理解するために工場見学と実際の騒音を聞き実態把握につとめた。作業内容(溶射装置)によって音の特性に大きな違いがあることや防音方法に差があることが判った。防音方法として一般的には,集塵装置を備えた溶射ブースが用いられているようであった。すなわち,工場建屋の中に溶射加工を行うスペースとして集塵装置を配置した溶射ブース,さらに窓越しに溶射設備を制御監視する制御室を備えている。溶射ブースは密閉性の強いドアおよび吸音材,遮音材を用いた防音壁構造となっている。溶射ブースの遮音性能は十分に高いものの,溶射装置によっては120dB(A)を超える騒音を発生するものもあるためブースのドアを閉めた状態であっても耳栓などの対策が必要であることがわかった。
図1 F4 のスペクトログラム
図1 F4 のスペクトログラム
図2 JP5000 のスペクトログラム
図2 JP5000 のスペクトログラム
 実際に溶射音が持つ音の特性を知るために溶射装置の中でも特に騒音の激しい機種(F4 およびJP5000) を対象としてその溶射音を解析した。図1 はF4,図2 はJP5000 のスペクトログラムである。図よりF4 は15kHz までの周波数域にいくつかの特徴的な周波数ピークを持つこと,また,JP5000 は15kHz までの広い周波数帯域で騒音が大きいことがわかる。